FDE(Forward Deployed Engineer)とは? SalesforceとAIの導入支援が「伴走型」に変わる理由

2026年10月12日

この記事の要点

  • ニュース:SCSKが、AIの導入から定着まで現場で伴走する「FDE」を、2027年までに100名育てると発表しました
  • 読み解き:AIで置き換わるのは「入力」と「出力」です。要件を定義して作り、出来たものを見せる進め方が要らなくなり、仕事の中心が業務の整理に移っています
  • 提言:SalesforceのAI活用は「何を作るか」ではなく「どこから入力し、何を見るか」から考えます。作る作業は減りますが、業務を整理し、得たい価値を決めることは残ります

FDE(Forward Deployed Engineer)とは

FDEは「Forward Deployed Engineer」の略で、お客様の現場に入り込み、AIなどの技術の試験導入から本番稼働、定着まで、一気通貫で伴走する専門職です。

2026年10月8日、SCSKはSalesforceの「Agentforce」で営業のAIエージェントを自社で作り、運用する体制を整え、2027年までにFDEを100名育てると発表しました。まず自社で使って成果を確かめ(Salesforceが「カスタマーゼロ」と呼ぶ考え方)、そのノウハウをお客様向けのサービスにする計画です。

発表では理由として、生成AIやAIエージェントの進展で、営業活動に求められる水準が大きく変わったことを挙げています。

AIの開発会社の側でも、同じ言葉が使われ始めています。Anthropicは2026年10月、1億ドルを投じて、2027年末までに1万人の「Frontier Deployed Engineers(FDE)」を育てる「Claude Frontier Academy」を発表しました。AI導入を遅らせている課題として、人材の不足を挙げています。

FDEと従来の常駐の違い

「現場に入り込む」という点では、昔からある常駐型の支援と似ています。違うのは、目指すところと進め方です。

従来の常駐(人月型)FDE
ゴール仕様どおりに作って納品業務で使われ、成果が出るまで
進め方要件定義 → 開発 → テスト試して直すを短く繰り返す
評価工数・期間定着・成果

FDEが求められる理由1:AIで「入力」と「出力」が自動化された

AI導入で置き換わるのは、「入力」と「出力」の自動化だと私は考えています。

  • 入力:名刺を写真に撮れば、AIが文字を読み取り、Salesforceの取引先と取引先責任者に登録する
  • 出力:AIに指示するだけで、商談のグラフやパイプラインの分析、予算と実績の比較表ができる

どちらも、私がClaudeとSalesforceをつないで試してきたことです。

背景には、SaaSの普及があります。営業はSalesforce、会計はクラウド会計、メールやファイルもクラウドにあり、データはすでにそろっています。MCP(AIと外部のサービスをつなぐ仕組み)を使えば、開発なしでAIからつながります。

FDEが求められる理由2:「作って見せる」進め方が要らなくなった

これまでのシステム導入は、「要望を聞く → 要件を定義する → 実現方法を考える → 作る → 出来たものを見せる」という流れでした。作るのに時間がかかるため、先に仕様を決めきる必要がありました。

入力と出力をAIが引き受けると、この流れの多くが要らなくなります。その場でAIに指示し、結果を見て、違えば直す。お客様と一緒に試せるため、「納品」ではなく「伴走」が合うようになります。

FDEが求められる理由3:業務を整理できる人が足りない

作る作業が減ったあとに残るのは、次の2つです。

  • 業務を整理する力:情報の入口は名刺以外に何があるのか。ダッシュボードで見るべきものは何か
  • お客様が得られる価値を追求する力:入力や集計が楽になった先に、何が見え、何ができるようになるのか

Salesforceは、業務に特化した推論モデル「Koa」について、1件目と同じ定義を100件目にも一貫して当てはめられることを強みに挙げています。AIが定義を一貫して当てはめられるほど、その定義をどう整理するかが大切になります。

FDEの育成が大手のSIerとAIの開発会社の両方で進んでいるのは、この力を持つ人が足りていないことの表れだと私は読んでいます。

なお、「新規の開発が減り、運用や定着の段階に入っている」という見方もありますが、これは裏付けとなるデータではなく、私が現場で感じている変化です。

SalesforceのAI活用は「どこから入力し、何を見るか」から考える

SalesforceにAIを足すときは、「どんな機能を作るか」より先に、次の2つを整理することをおすすめします。

AI活用の前に整理する2つのこと

●入力:情報はどこから入ってくるのか(名刺、得意先からのメール、議事録、見積書など)

●出力:会議や判断のときに、何を見て、何をチェックしたいのか

これが整理できていれば、作る部分の多くはAIが引き受けてくれます。

業務の定義を決めるのは、お客様ご自身です。導入を支援する側の役割は、問いかけながら一緒に整理し、Salesforceの想定する使い方に合わせる方法を示すことだと考えています。

作る作業はAIで減ります。でも、業務を整理し、得たい価値を決めることは残ります。

まずは、自社の商談の情報がどこから入ってきているか、入口を書き出してみてください。


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参考

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