2026年10月10日
この記事の要点
- 問題点:ClaudeなどのAIエージェントからSalesforceを使う呼び出しが、Flex Creditsの計測対象(HPI)になる。単価は未発表で、今のままでは費用も接続の見直しも読めない
- 解決策:AI接続の棚卸し、呼び出し回数の見積もり、契約更新日の確認の3つを、単価の発表前に進めておく
- 効果:単価が発表されたら、すぐに月額を出して判断できるはずです。AIで聞くだけで答えが返る便利さは続くが、どのAIに何を許すかを決めることは残る
SalesforceのMCP・API連携で、何が有料化されるのか
Salesforceは、登録されたAIエージェントがMCPまたはAPI経由でSalesforceを呼び出して成功するたびに、1回の「Headless Platform Interaction(HPI)」として数える仕組みを導入します。HPIはFlex Creditsの料金表(Rate Card)に加わる新しい利用区分で、消費量はDigital Walletで確認します。2026年9月17日公開の公式ヘルプに書かれている内容です。
公式ヘルプで確定しているのは、次の点です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 計測の対象 | 登録済みエージェントが、MCPまたはAPI経由で行った成功した呼び出し |
| SalesforceのMCPサーバー | 利用するには、すべての顧客でエージェントの登録が必須 |
| 新規購入の顧客(2026年9月17日以降) | 登録機能の提供通知から3か月以内に、APIを使う全エージェントを登録 |
| 既存の顧客 | 契約更新のタイミングで登録し、新しい課金モデルへ移行 |
| 対象外 | Sandbox、スクラッチ組織、Developer Edition |
| 変わらないもの | 人が設計した従来型のシステム連携(API連携)の価格とセキュリティ |
| 提供の目標時期 | 登録の仕組みと課金モデルは11月が目標 |
「API連携がすべて有料になる」わけではありません。AIエージェントによる利用だけが、別の計測区分に分けられる、と理解するのが正確です。
Agent Identityとは:AIエージェントに、人とは別のIDを持たせる
Agent Identityは、登録したエージェントごとに、人のユーザーとは別のIDを作る仕組みです。これまでClaudeからSalesforceにつなぐときは、多くの場合、特定の社員のユーザーでログインしていました。AIが人の名義で動いていた状態です。
登録後は、次のように変わります。
- エージェントのIDに、人より絞った権限セットを割り当てられる
- エージェントは新しいOAuth認証情報で接続し、Salesforce側で「エージェントの呼び出し」と区別できる
- 今使っているMCPクライアントやAPI連携は、接続設定のやり直しが必要になる
社長や管理者のアカウントでClaudeをつないでいる場合は、課金とは別に、権限の面でも見直しのきっかけになります。
まだ決まっていないこと:HPIの単価はいくらか
HPI 1回あたりの費用は、2026年10月10日時点で発表されていません。
| 項目 | 現時点の状況 |
|---|---|
| HPI 1回あたりのクレジット消費(倍率) | TBA(未発表) |
| 計測の開始 | 未開始。倍率を設定する30日前までに通知される |
| 登録機能と課金モデルの提供 | 11月が目標(確定日ではない) |
| Claudeforce(Salesforce in Claude)の扱い | 公式ヘルプには記載なし |
Flex Credits自体は「10万クレジットあたり500ドル」と紹介されています。ただ、HPIの倍率が分からないため、1回の呼び出しの金額はまだ計算できません。金額を断定している情報は、推測として読むのが安全です。
海外での反応と、他社のMCPとの違い
Salesforce Ben(2026年10月7日)は、AIツールの利用料に加えてSalesforce側でも払う「二重払い」になること、エージェントは人より呼び出し回数が多くなりやすいこと、課金を避けるためにデータを外へコピーする設計が増えるおそれがあることを指摘しています。
同じ週に、Atlassianは新しいAtlassian MCPの一般提供を発表しました(2026年10月6日)。読み取り・書き込み・破壊的な操作を分けて管理でき、OAuth 2.1と既存のユーザー権限をそのまま使う形です。AIエージェントへのデータの開き方は、SaaSごとに違ってきています。使っているツールごとに、費用と権限の考え方を確認する必要があります。
準備すること1:SalesforceにつながっているAIを棚卸しする
まず、SalesforceにつながっているAIを一覧にします。この一覧が、エージェントを登録するときの台帳になります。
| 書き出す項目 | 例 |
|---|---|
| AIの名前 | Claude、ChatGPT、自社製のツール |
| 接続しているユーザー | 社長のユーザー、管理者のユーザー、連携用ユーザー |
| 使い方 | 商談の状況の確認、活動の登録、レポートの作成 |
| 必要な操作 | 読み取りだけか、作成・更新も必要か |
「必要な操作」を書き出すと、AIに許す操作を絞れます。読み取りだけでよい業務に、書き込みの権限は要りません。権限を絞ると、安全になるうえ、エージェントがどんな呼び出しをするかも読みやすくなります。
準備すること2:呼び出し回数を見積もる
月の呼び出し回数は、次の掛け算で見積もれます。
月の呼び出し回数 = 使う人数 × 1人が1日にAIへ質問する回数 × 1回の質問でAIがSalesforceを呼ぶ回数 × 月の営業日数
最後の「1回の質問でAIがSalesforceを呼ぶ回数」は、実際に試さないと分かりません。エージェントは、項目の定義の確認や検索を何度か行ってから答えるためです。Sandboxは計測の対象外なので、今のうちにSandboxで、よく使う質問を試して回数を確かめておきます。
倍率が発表されたら、この回数に掛けるだけで月額を出せます。
準備すること3:契約更新日を確認し、Salesforceの営業担当と話す
既存の顧客は、契約更新のタイミングで新しい課金モデルへ移ります。更新日が、実質的な締め切りです。
契約書や請求書で更新日を確認し、準備すること1の一覧と、準備すること2の見積もりを持って、Salesforceの営業担当に相談しておくと、更新の時点で慌てずに済みます。
課金を避けるために、データをSalesforceの外へコピーしない
課金を避けるために、顧客データをスプレッドシートや別のデータベースにコピーしてAIに読ませる方法も考えられます。ただ、おすすめはしません。
データを複製すると、どれが最新か分からなくなります。Salesforceの権限も効かなくなるため、「営業は自分の顧客だけ見られる」といったルールが外れます。この管理の手間を払い続けるより、データはSalesforceの中に置き、AIに許す操作を絞る方が、続けやすい形です。
まとめ:単価の発表前に、決めておくこと
今から準備する3つのこと
●SalesforceにつながっているAIを棚卸しし、AIに許す操作を絞る
●Sandboxで試して、月の呼び出し回数を見積もる
●契約更新日を確認し、Salesforceの営業担当と話す
- 単価が発表されたら、すぐに月額を出して、続けるかどうかを判断できるはずです
- エージェントの登録が必要になったとき、台帳をもとに迷わず登録できます
- AIの権限が整理され、誰の名義で何をしているかが分かるようになります
チャットで聞くだけで答えが返る便利さは、これからも続きます。でも、どのAIに何を許すかを決めることは、残ります。単価が発表されたら、このブログで具体的な試算を書く予定です。
参考資料
- Salesforce Help:APIを使うエージェントの登録(2026年9月17日公開、公式)
- Salesforce Ben:Salesforce Will Charge Flex Credits for Agentic MCP and API Calls
- Salesforce Ben:Is Salesforce AI Pricing Encouraging Bad Architecture?(2026年10月7日)
- Salesforce:Flex Creditsの価格に関するプレスリリース(2025年5月15日)
- Atlassian:Atlassian MCP brings more of your work within reach of any AI agent(2026年10月6日)
- Salesforce:Claudeforce
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