2026年10月6日
この記事の要点
- 問題点:代理店やディーラーから状況を聞かれるたびに、社内の担当者が調べて答えている
- 解決策:Experience Cloudを使い、外部ユーザーに自分のレコードだけを共有する。見せる項目は「オブジェクト×プロファイル」のマトリクスで先に決める
- 効果:相手が自分で状況を確認でき、問い合わせの往復が減る。AIで見え方の確認は大きく減らせるが、何を見せるかを決めることは残る
問題点:なぜ、取引先からの問い合わせがなくならないのか
代理店やディーラー、サロンなど、取引先を通して商品を販売している会社では、取引先から「うちが発注した分、今どうなっていますか」と聞かれることがよくあります。
そのたびに、社内の担当者がSalesforceの画面を開いて調べ、電話やメールで答えます。担当者の手が止まりますし、取引先も、答えを待つことになります。
原因は、担当者の対応が足りないことではありません。取引先が自分で確認できる仕組みがないことにあります。
ただし、取引先に見せるときには、注意が必要です。他社の情報や、原価のように見せてはいけない項目が見えてしまうと、大きな問題になります。そのため、「どうやって見せるか」と「何を見せるか」を、分けて考えることが大切です。
事例:ディーラーとサロンに、注文実績を見せた化粧品メーカー
この会社には、ディーラーやサロンといった取引先がいます。取引先からの問い合わせ対応を減らしたい。それが、Salesforceを導入したメインの目的でした。
ご要望は、次の3つでした。
- 取引先が自分で、自社の注文実績を見られるようにしたい
- 原価に関わる項目は、見せたくない
- ディーラーとサロンでは、見せる内容を分けたい
そこで、Salesforceの外部ユーザー向けの仕組み(Experience Cloud)を使い、取引先ごとに、見せるものを決めて設定しました。
見直し1:Experience Cloudを使い、外部ユーザーにデータを共有する
Salesforceでは、社外の取引先のユーザーを「外部ユーザー」と呼びます。
Experience Cloudを使うと、外部ユーザーは、自分の会社や店舗のレコードだけが見えて、他社のレコードは見えないように設定できます。ライセンスが必要になりますが、標準機能の範囲で設定可能です。
独自の画面を作り込む前に、まず標準機能で実現できないかを確かめることをおすすめします。
設定に入る前に、確かめておくことの例です。
- どの取引先に開くか(ディーラー、サロンなどの種類と、おおよその人数)を一覧にする
- 取引先に見せたいもの(注文実績など)が、Salesforceのどのオブジェクトに入っているかを確かめる
- 必要なライセンスの種類と数を確認する
見直し2:見せる項目は、「オブジェクト×プロファイル」のマトリクスで、要件定義のときに決める
外部ユーザーを、ディーラーやサロンなど、種類ごとのプロファイル(属性)に分けます。そのうえで、どのプロファイルに、どのオブジェクトのどの項目を公開するかを決めます。
そのための表が、マトリクスです。縦にオブジェクト、横にプロファイルを並べて、それぞれのマスに、公開する項目を書きます。
マトリクスの例です(項目は説明のための例です)。
| オブジェクト | ディーラー | サロン |
|---|---|---|
| 注文 | 注文日、注文番号、状況、金額 | 注文日、注文番号、状況 |
| 注文商品 | 商品名、数量、単価 | 商品名、数量 |
| 原価に関わる項目 | 公開しない | 公開しない |
マトリクスを作るときの手順の例です。
- 外部ユーザーを種類ごとに分け、プロファイルを決める
- 取引先に見せたいオブジェクトを、縦に並べる
- マスごとに、公開する項目を書く。見せない項目も、「公開しない」と書いてはっきりさせる
- お客様に確認していただき、決まった表をもとに設定する
事例:化粧品メーカーでは、原価に関わる項目を見せない、ディーラーとサロンで見せる内容を分ける、という要望を、このマトリクスで決めていきました。
何を見せるかは、お客様の業務の判断です。導入する側が代わりに決めるものではありません。一方で、マトリクスを作って、決める材料をそろえるのは、導入する側の仕事です。
Salesforceの導入を依頼するときや、提案を受けるときは、「見せる範囲を、プロファイルごとに一覧にしてもらえるか」を、確認してみてください。
AIに任せるとできること
ここまでが、従前のやり方です。
外部ユーザーへの共有は、間違いがあってはいけません。そのため、テストに時間をかけます。外部ユーザーのプロファイルごとに、見える・見えないのパターンをすべて洗い出して、2名で確認していました。
AI時代には、ここが大きく変わると考えています。
Claude Codeに指示すると、Salesforceの設定ファイルを読みにいき、外部ユーザーから見えるものを調べてくれます。人が画面を1つずつ開いて確かめなくても、指示するだけで、結果が分かる。パターンの洗い出しから、見え方の確認までを、大きく効率化できると思います。(実際に試した結果ではなく、私の見解です)
たとえば、次のような指示が考えられます。
ディーラーのプロファイルで、注文と注文商品のどの項目が見えるかを調べて、マトリクスと違うところを一覧にしてください。
これは設定ファイルを読む使い方なので、お客様が画面で使うものではありません。導入する側が、設定を確認するときの作業です。
ここでも、AIは決めた基準に従って作業します。マトリクスに書いた内容が基準になります。「ディーラーには、この項目を見せない」と決まっていれば、見えてしまっている項目を、AIが指摘できます。
AIで要らなくなるのは、確認に使う手間です。「誰に、何を見せるか」を決めることは、残ります。これは、見直し2でマトリクスに書いたものと同じです。
また、AIが読んだ内容を、メールや資料に載せるときは、取引先に出してよい内容かを、人が確認してください。
効果:見直したあと、何が変わるか
見直したあとは、お客様にとって、次のような変化が期待できます。
- 取引先が、自分で状況を確認できるようになり、問い合わせへの対応が減ります
- 取引先にとっても、答えを待たずに確認できます
- 見せる範囲を、先にマトリクスで決めておくので、見せてはいけないものが見える間違いが、起きにくくなります
私たちにとっても、見え方の確認に使っていた時間が、減るはずです。その分を、マトリクスを決める支援や、稼働後のAI活用の提案に使えます。
まとめ
見直す2つのこと
●Experience Cloudを使い、外部ユーザーに自分のレコードだけを共有する
●見せる項目は、「オブジェクト×プロファイル」のマトリクスで、先に決める
AIで、確認の手間は大きく減ります。でも、誰に、何を見せるかを決めることは、残ります。
まずは、取引先の立場でSalesforceにログインして、見せたくない項目が見えていないか、1画面だけ確かめてみてください。まだ外部ユーザーに開いていない場合は、取引先から聞かれる内容を、1週間、書き出してみてください。何を見せたいかが、見えてきます。
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