「Salesforce in Claude」を試したら、マネジャーがなくてもパイプラインマネジメントができると思いました

2026年9月30日

週に一度、マネジャーが商談の一覧を開き、ひとつずつ確認していく。

止まっている商談はないか。次にやることは決まっているか。今月の受注見込金額は、予算に届きそうか。気になる商談があれば担当者に声をかけ、状況を聞いて、次の行動を決める。

パイプラインマネジメントと呼ばれるこの仕事は、営業の成果を左右する大切な仕事です。一方で、商談の数が増えるほど時間がかかり、マネジャーが忙しい週ほど後回しになりがちです。

9月にサンフランシスコで開かれたDreamforce ’26で、この確認をClaudeに頼めるようになる発表がありました。SalesforceとAnthropicの提携「Claudeforce」の中の「Salesforce in Claude」です。ベータ版は、すでにすべてのSalesforceのお客様が利用できると発表されています。

前回は、受注見込金額の出し方の話をしました。今回は、この「Salesforce in Claude」を実際に試してみて分かったことと、使い始める前に確認しておいてほしいことをお話しします。

「Salesforce in Claude」とは

一言でいうと、Salesforceを開かずに、Claudeとの会話の中でSalesforceの情報を使えるようにする仕組みです。

Salesforceの発表では、次のように説明されています。

  • 営業向けに、あらかじめ用意された37種類の「スキル」がある
  • 例として、商談前の準備、商談の状況確認(ディールヘルス)、パイプラインのレビューが挙げられている
  • Salesforceだけでなく、Slackなどの情報もあわせて読み、最新のデータでまとめを作る
  • Salesforceの今の権限や業務ルールの範囲で動く

これまで、ClaudeとSalesforceをつなぐには、MCPサーバーという接続の仕組みを自分で用意する必要がありました。私もこれまでの記事で、自作の仕組みを使ってSalesforceやfreee、Gmailの情報をClaudeに比べさせる検証をしてきました。

それが、Salesforceの公式の機能として用意されたことになります。接続のための開発をしなくても試せるようになったのは、大きな変化です。

いま試せる3つの使い方

37種類のスキルのうち、発表で例として挙げられている3つを、パイプラインマネジメントに当てはめてみます。

1. パイプラインのレビュー

今月や今四半期の商談をまとめて、受注見込金額と予算の差や、動きの止まっている商談を洗い出す使い方です。

マネジャーが週次や月次で行っている確認そのものです。月初の営業会議の資料づくりが、いちばん分かりやすい使い道だと思います。

2. 商談の状況確認(ディールヘルス)

進んでいる商談について、止まっていないか、次にやることが決まっているかを確認する使い方です。

マネジャーが担当者と1対1で商談を確認する前に使うと、確認の時間を短くできそうです。

3. 商談前の準備

「明日訪問するABC社の準備をして」と頼むと、取引先、商談、過去の活動、関係者をまとめてくれる、という使い方です。

担当者が替わったばかりの取引先や、久しぶりに連絡する取引先ほど、効果が大きいと思います。

実際に試してみました

ベータ版を、実際に試してみました。Claudeには、次の順に頼みました。

パイプライン管理を実行してください。実施すべき行動を示唆してください
↓
結果をダッシュボードにしてください
↓
私が実施すべき活動を教えてください

最初に感じたのは、返ってくる答えが人間のようだということです。項目の値を並べるのではなく、状況を読んだうえで話しかけてくるような答え方をします。

よかったのは、商談だけでなく、活動やカスタムオブジェクトのデータまで読み込み、理解したうえで答えているように見えたことです。

私の組織では、売上の情報をカスタムオブジェクトで管理しています。Claudeは、この売上のデータを商談と照らし合わせ、確定売上が計上されていない商談をピックアップしてきました。私が売上のオブジェクトについて説明したわけではありません。

2つ目の依頼では、その結果をダッシュボードにしてくれました。

これはSalesforceのダッシュボードではなく、Claudeの「アーティファクト」と呼ばれる、会話の画面に表示される成果物です。レポートやグラフの設定を何もしていないのに、プロンプトひとつで、見やすいビジュアルなダッシュボードが出てきます。

そして3つ目の「私が実施すべき活動を教えてください」には、GmailやGoogleカレンダーもあわせて参照したうえで、具体的な行動を指示してきました。たとえば、次のような内容です。

  1. 明日が期日の大型案件をフォローする
  2. 期日切れの13件を整理する
  3. 後半フェーズの商談に金額を入れる
  4. 実態とフェーズがずれている商談を直す

1〜3は、商談の期日や金額を見れば分かることです。項目をチェックする仕組みを作れば、これまでのシステムでも出せたと思います。

驚いたのは4つ目です。

Claudeは、商談にひも付いた活動の日付と内容を読んでいました。活動を見ると商談は先に進んでいるのに、フェーズが前のまま変わっていない。そう判断して、「このフェーズは実態と合っていません」と言ってきたのです。

これは、項目の値をチェックするだけでは出てこない指摘です。フェーズの値だけを見ても、ずれているかどうかは分かりません。活動の中身を読んで初めて気づけることです。

マネジャーが活動の記録に目を通しながら「この商談、もう次の段階に進んでいるよね。フェーズを更新しておいて」と声をかける。そういう人間の判断に近いことを、Claudeがやっていました。

気になる商談を見つけ、状況を確かめ、担当者に次の行動を伝える。マネジャーがパイプラインマネジメントでやっていることの多くを、Claudeがこなしていました。

正直に言うと、マネジャーがいなくても、パイプラインマネジメントができると思いました。

フェーズのずれに気づけたのは、フェーズの意味が決まっていたから

ただ、ここで前回と同じ話になります。

Claudeが「実態とフェーズがずれている」と指摘できたのは、それぞれのフェーズで何をしているはずかが、Salesforceの標準の使い方に沿って決まっていたからだと考えています。フェーズの意味があいまいなら、ずれているかどうかも判断できません。

フェーズに進む条件を決めるのは、AIではなく会社です。基準が決まっていれば、AIはその基準と実際のやりとりを見比べて、ずれを教えてくれます。

独自の項目や、作った人にしか分からない計算式を作り込むより、Salesforceの想定している使い方に業務を合わせておく。そのほうが、AIは説明がなくても意味を読み取ってくれます。

マネジャーの仕事は、商談をひとつずつ見て回ることから、この基準を決めて守ることへ移っていくのだと思います。

そのうえで、使い始める前に確認しておいてほしいことを3つにまとめました。

試す前に確認しておく3つのこと

1. どう接続するかを確認する

「Salesforce in Claude」は、Salesforceの公式の機能とはいえ、Salesforceの画面を開けばすぐ使えるものではありません。ClaudeとSalesforceをMCPでつなぐための設定が必要です。

接続の手順は、以前の記事「Salesforce Headless360でClaudeと連携!MCPサーバー構築不要の接続手順ガイド」で紹介したものと同じです。Salesforce側でMCPのサービスを有効にし、外部クライアントアプリ(認証の設定)とMCPサーバーを作り、Claude側でコネクタとして登録します。

私の場合、設定にかかった時間は60分程度でした。開発は要りませんが、Salesforceの管理者の作業は必要です。誰が設定するのかを、先に決めておいてください。

また、今回の結果でGmailやGoogleカレンダーまで参照できたのは、Claude側でGoogleのサービスを別につないでいたからです。「Salesforce in Claude」だけで、メールや予定まで読めるわけではありません。何をどこでつないでいるかを、管理者が把握しておくことが大切です。

2. 備わっている機能を把握する

37種類のスキルが、それぞれ何をするのかを先に確認しておいてください。

特に確認しておきたいのは、データを読むだけなのか、商談の更新まで行えるのかです。今回のように「期日切れの13件を整理する」「フェーズを直す」と指示されたとき、それを会話の中でそのまま実行できるなら、便利な一方で、意図しない更新が起きる可能性もあります。

どこまでをClaudeに任せ、どこからを人が確認するのか。機能を把握したうえで決めておくと、安心して使えます。

3. 各ユーザーに使わせるかどうかを、慎重に判断する

「Salesforce in Claude」は、Salesforceの今の権限の範囲で動くと発表されています。

これは安心材料であると同時に、今の権限設定がそのまま結果に表れる、ということでもあります。本来見えてはいけない商談や取引先が、プロファイルや共有の設定でたまたま見えている状態なら、Claudeのまとめにもそれが出てきます。

全員に一度に広げるのではなく、誰に使わせるかを一人ずつ判断してください。まずはマネジャーと数名の担当者から始め、その人の権限で何が見えるか、何ができるかを確認してから広げるほうが安全です。

費用の面でも、慎重に判断する理由があります。Salesforceは、Dreamforceの後に、外部のAIエージェントがMCPやAPIを通じてSalesforceを呼び出す操作に、Flex Creditという従量の課金をかける方針を示しています。1回あたりにどれだけ消費するかはまだ公表されておらず、課金を始める30日前に通知するとされています。使う人を広げる前に、契約の担当者に確認しておくと安心です。

まとめ

「Salesforce in Claude」を試す前に確認しておくこと
●ClaudeとSalesforceをどう接続するか、何をどこでつないでいるかを把握したか
●37種類のスキルで何ができるか、読むだけか更新までできるかを確認したか
●誰に使わせるかを一人ずつ判断し、その人の権限で何が見えるかを確認したか

Salesforceを開かなくても、止まっている商談を見つけ、実態とずれたフェーズまで指摘し、今週のアクションを指示してもらえる。マネジャーがいなくてもパイプラインマネジメントができると思うほどのことが、ベータ版とはいえ、すでに試せるようになりました。

ただ、AIがフェーズのずれに気づけるのは、フェーズの意味が決まっているからです。何をもって「進んでいる」「止まっている」とするかの基準は、会社が決めるものとして残ります。

まずは管理者の方がご自身のアカウントでつないで、今回の3つの文章をそのまま頼んでみてください。出てきた指示を見て、「これを担当者にも見せてよいか」を考えるところが、使い始める前の最初の確認になると思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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