Salesforce導入の開発範囲は「見積の段階」で決める。Excelの仕分けを始める前に決める3つのこと

2026年9月29日

「このExcelも、Salesforceに載せられますか」

導入の打ち合わせで、こう聞かれる場面は多いと思います。私も何度も聞かれてきました。お客様の手元には、営業の管理表、進捗表、集計表と、長年使ってきたExcelがたくさんあります。

最近は、AIのおかげで画面や集計を作る手間が大きく減りました。「載せられますか」と聞かれれば、たいていの場合「できます」とお答えできます。ただし、「何を範囲にするか」を決めることは別の話です。

前回は、入力項目の意味についてお話ししました。今回は、その手前にある「開発の範囲を、いつ決めるか」についてです。

よく見かける状態

導入や追加開発の相談では、次のような流れをよく見かけます。

見積の段階では、大きな要望だけを整理して金額を出します。Excelの管理表がどれだけあるか、それぞれをSalesforceに載せるのかは、プロジェクトが始まってから確認することになります。

始まってみると、資料が次々に出てきます。1枚ずつ開いて「これは再現する」「これは要らない」と仕分けていくうちに、範囲が少しずつ動いていきます。

見積の時点で整理しておけば防げたことが、始まってからの作業になっている。私はそう感じています。

事例:仕分けの時期が違った3社

ホームページ制作の会社の場合

移行元は、Excelのファイルが約40、シートにすると200を超えていました。部署ごとに似たシートがあり、同じような項目が別の名前で並んでいました。

プロジェクトの開始後に、シートを1枚ずつ「Salesforceで再現するか、不要か」と判定していきました。結果として、多くは「対応不要」か「旧フォーマット」でした。

仕分けの作業そのものは、お客様と一緒に進められました。ただ、見積の時点でこの数が分かっていれば、範囲をあらかじめ決められたはずです。

自動車販売の会社の場合

お客様から、Excelやたくさんの資料が届きました。優先度をつけて一覧にし、1ファイルずつ「決定済み」「検討中」「未検討」「実現不可」に仕分けました。

「実現不可」と判断したものは、Salesforceの標準の使い方では難しいものでした。この仕分けが終わるまでは、設計を進めにくい状態が続きました。

コンサルティング会社の場合

こちらは、範囲を先に決めた例です。

導入のとき、契約後の年間スケジュールの管理まで、画面開発を含めて検討していました。ただ、スケジュール管理まで一度にシステム化すると、使う人の負荷が増えて定着に影響が出る。お客様はそう判断され、「年間スケジュールはSalesforceで管理しない」と決めて始めました。訪問日程とメールの履歴だけを、Salesforceで見ることにしたのです。

3年後、運用が回ったところで、あらためて年間スケジュールの画面を開発しました。このときは、入力の負荷がかからないことを優先しました。営業が外出先でも簡単に入力できるように、モバイルで使えるようにしたのです。

この事例で独自の画面を開発したのは、運用が定着したあとで必要性が確認できたからです。最初から作り込んだわけではありません。新しく独自の仕組みを作ってまで範囲を広げることは、おすすめしません。

共通していること

3社に共通していたのは、「範囲が決まった時点で、計画が固まる」ということです。

範囲が決まっていない間は、要望が増え続けます。決まってからは、進める作業が見えます。コンサルティング会社のように最初に範囲を決めた会社は、あとから足すときも迷いませんでした。

範囲は、プロジェクトが始まってから決めるものではなく、見積の段階で決めておくものだと思います。そして、要望を整理して範囲を明確にするのは、お客様だけの仕事ではなく、私たち導入する側の役割でもあります。

AIに任せると、何が変わるか

以前は、Excelを1枚ずつ開いて仕分けていました。数週間かかる案件もありました。

今は、AIにExcelを読ませることで、項目の対応表や、似たシートの洗い出しの下書きを作れます。見積の前に要望を整理する作業が、ずいぶん速くなりました。

ただし、AIは「何を載せて、何を載せないか」を決めてくれるわけではありません。範囲は、お客様の業務の判断です。基準が決まっていれば、AIはその基準に従って仕分けを進め、範囲から外れたものを指摘するチェック役にもなれるはずです。

見積の段階で決める3つのこと

Salesforceには、商談、取引先、取引先責任者、活動といった標準の仕組みがあります。それに合わせて、次の3つを見積の段階で決めておくことをおすすめします。

1. 要望を一覧にして、標準で足りるかを確かめる

Excelの管理表など、載せたいものを見積の前にすべて一覧にします。そのうえで、標準の商談、取引先、取引先責任者、活動で足りるかを、1つずつ確かめます。

標準で足りるものは、標準のまま使います。足りないものだけが、開発の候補になります。

2. 「今回やらないこと」を、見積書と計画書に書く

載せるものだけでなく、載せないものも書いておきます。「次のフェーズに回す」「Excelと併用する」という扱いも、範囲の決め方の1つです。

書いてあれば、始まってから「あれはどうなりましたか」と迷うことが減ります。コンサルティング会社のように、使う人の負荷を考えて「今回はやらない」と決めることも、大切な判断です。

3. 範囲外の要望は、変更として扱う

始まってから出た新しい要望は、その場で作り込むのではなく、計画書に書かれた範囲と照らして判断します。範囲内なのか、範囲外なのか。人の印象ではなく、書かれた記載を基準にします。

なお、新しく独自の仕組みを作ってまで範囲を広げることは、おすすめしません。標準で足りるかを確かめることが、最初の判断です。

まとめ

見積の段階で決める3つのこと ●要望を一覧にして、標準で足りるかを確かめる ●「今回やらないこと」を、見積書と計画書に書く ●範囲外の要望は、変更として扱う

AIで開発の手間は減らせます。でも、範囲を決めることは残ります。

まずは、いまお手元にあるExcelの管理表を、何枚あるか数えてみてください。そのうち、「Salesforceで管理する」と説明できるものは、いくつあるでしょうか。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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