Salesforce 情報漏洩対策|管理者のパスワードで動く連携を、連携専用ユーザーとOAuthに切り替える2つの見直し

2026年10月26日

この記事の要点

  • 問題点:顧客データを全件取り出せて、設定まで変えられる管理者のIDとパスワードが、誰も見ない連携のプログラムや設定ファイルの中に置かれたままになっている
  • 解決策:人ではない接続を棚卸しし、連携専用のユーザーと、標準の接続方法(OAuth)に置き換える
  • 効果:誰が、何を、どの権限でつないでいるかが見えるようになり、パスワードの変更や担当の交代で連携が止まりにくくなるはずです。AIで書き換えの作業は減るが、どの接続を残し、何の権限を渡すかを決めることは残る

最近の情報漏洩では、クラウドに入るためのログイン情報(APIキー、トークン、IDとパスワード)を盗まれ、正規の利用者として入られる手口が目立ちます。暗号化していたデータが、復号の鍵ごと読み出された事例も公表されています。

AIが攻撃に使われている、とも言われます。ただ、AIで新しい攻撃が生まれたというより、前からあった弱点が、速く、大量に見つかるようになった、と考えるのが実態に近いようです。昔から放置された弱点ほど、今、見つかりやすくなっています。

この記事では、それをSalesforceに当てはめ、見落とされやすい「連携の接続」を見直す方法を、2つにまとめます。

事例:管理者のIDとパスワードで動く連携

データローダーの夜間バッチ

私はこれまで、20社以上のお客様で、データローダーをサーバーに入れ、Windowsのコマンドラインから起動する夜間バッチを作ってきました。多くは社内のネットワークの中で動いています。接続には、システム管理者のIDと、暗号化したパスワードを使っていました。

Herokuの連携

別のお客様では、Herokuで動くシステムがSalesforceから顧客データを全件取得し、Heroku側のデータベースを更新する連携を作りました。こちらも、管理者のIDとパスワードで接続していました。

当時は、連携のためだけにライセンスを買う負担が大きく、管理者のIDで接続するのは、よく使われていた方法でした。

問題点:管理者の権限が、誰も見ないところに置かれている

気になる点なぜ危ないか
システム管理者のIDを使っている全件の取り出しに加え、設定の変更やユーザーの追加までできる。漏れたときの被害が最も大きい
パスワードを暗号化しているデータローダーの暗号化は、鍵のファイルで元に戻す仕組み。鍵が同じサーバーにあれば、そこに入れる人は元に戻せる
社内のネットワークで動いている外からは見えず安全に感じるが、存在そのものが忘れられやすい
パスワードを変えるとバッチが止まる変えにくく、同じパスワードのまま何年も使われがち
ログインの方法に廃止の期限があるデータローダーの夜間バッチが使うログインの方法は、2027年の夏ごろのリリースで使えなくなる予定。期限が来れば連携が止まる

原因は、お客様の不注意ではありません。連携は動いている限り見直されず、どのプログラムが、どのユーザーで、どの方法で接続しているかが、会社の管理の対象になっていないことです。

見直すこと1:人ではない接続を棚卸しする

まず、プログラムとしてSalesforceに入ってくる接続と、Salesforceから外へ出ていく接続を、一覧にします。

手順の例

  1. 設定の「ログイン履歴」を開き、ユーザー、ログインの種別、アプリケーション、時刻を確認する(必要に応じて表示する列を追加し、CSVでダウンロードする)
  2. 毎晩同じ時刻に入ってくる接続や、管理者のユーザーでの接続を洗い出す
  3. 顧客データを全件取得しているもの、管理者の権限で動いているものから、優先して確認する
  4. Apexなど、Salesforceから外のシステムへつなぐ処理に、IDやパスワードを書き込んでいないかを確認する
  5. 結果を「連携の一覧」として、会社で持つ

連携の一覧に書く項目の例

項目書く内容の例
連携の名前基幹からの取引先の取り込み
向き外部→Salesforce、Salesforce→外部
接続に使うユーザー管理者、連携専用ユーザー
接続の方法ID・パスワード、OAuth、指定ログイン情報
扱うデータ取引先、商談(全件・差分)
動く場所と時刻社内サーバー、毎日2時
作った人・保守する人社内、ベンダー名

作った人やベンダーが変わっても、何がつながっているかが分かる状態にすることが目的です。

見直すこと2:連携専用のユーザーと、標準の接続方法に置き換える

Salesforceは2023年から、APIからだけアクセスできる連携専用のライセンス(Salesforce Integrationライセンス)を提供しています。画面からはログインできません。Enterprise Edition以上の組織には、5つが無料で付いています。連携のためにライセンスを買う負担は、以前よりずっと小さくなりました。

接続の形ごとの置き換え先

接続の形よくある例置き換え先
外部のプログラム→SalesforceHeroku、基幹システムのバッチ連携専用ユーザー+OAuth(外部クライアントアプリ)
データローダーのコマンドライン夜間の取り込み・書き出し新しい版のデータローダー+OAuth、連携専用ユーザー
Salesforce→外部Apexからの外部API呼び出し指定ログイン情報(Named Credentials)
AIClaudeなどのAIとの接続外部クライアントアプリ(OAuth)。渡す権限を絞る

連携専用ユーザーの作り方(流れ)

  1. 設定の「会社情報」で、Salesforce Integrationライセンスの数を確認する
  2. ユーザーを作り、ライセンスに「Salesforce Integration」、プロファイルにAPI専用のもの(Minimum Access – API Only Integrations)を選ぶ
  3. 権限セットで、連携に必要なオブジェクトと項目の権限だけを付ける
  4. 外部クライアントアプリでOAuthの接続を設定し、プログラム側の認証を書き換える

連携ごとに1つのユーザーを作ると、どの連携が何をしたかを追いやすくなります。

独自の暗号化の仕組みを作り込むより、標準の接続方法に合わせるほうが、安全で、保守も楽です。ただし、コマンドラインのバッチをOAuthに切り替えるには、手順を組み直す必要があり、手間がかかります。どの連携を残し、どの権限を渡すかは、お客様の業務そのものです。私たちは、それをSalesforceの標準の接続方法に合わせる方法を提案します。

まずは、ログイン履歴を開き、毎晩同じ時刻に入ってくる「人ではない接続」がいくつあるか、数えてみてください。

AIで変わること、変わらないこと

変わること

項目これまでAI時代
古い連携の中身の把握技術者がプログラムや設定ファイルを読み解く設定ファイルやプログラムをClaudeに読ませ、接続先・ユーザー・扱うデータを一覧にできる(プロンプトで可能と考えています。実際に試した体験は、まだありません)
OAuthへの書き換え技術者が手で書き直す。動いている連携ほど後回し書き換えの案づくりをAIに任せられる

AIそのものも、連携の一つです。私も最初は、テストのためにOAuthではない認証でClaudeとSalesforceをつなぎ、その後、外部クライアントアプリによるOAuthに移しました。

変わらないこと

  • どの接続を残し、どれを止めるか
  • 連携のユーザーに、どのデータと権限を渡すか
  • 書き換えた連携が正しく動くかの確認
  • AIに渡してよいデータの範囲

まとめ:効果・メリット

連携の接続を見直す2つのこと

●人ではない接続を棚卸しし一覧を会社で持つ

●連携専用のユーザーと、標準の接続方法(OAuth)に置き換える

見直したあと、お客様にとって、次のような変化が期待できます。

  • 誰が、何を、どの権限でつないでいるかが見えるようになります
  • パスワードの変更や、担当・ベンダーの交代で、連携が止まりにくくなるはずです
  • ログインの方法の廃止にも、期限の前に備えられます
  • AIをつなぐときも、同じ基準で、安心して広げられるはずです

私たちにとっても、連携の切り替えを計画的に進められます。そのぶん、稼働後の運用支援や、AI活用の提案に、時間を使えます。

AIで、プログラムを書き換える作業は減ります。でも、どの接続を残し、何の権限を渡すかを決めることは、残ります。

まずは、ログイン履歴を開いて、人ではない接続がいくつあるか、数えてみてください。

最後までお読みいただきありがとうございました。


無料診断を行っています

Salesforceを導入済みの企業様が取引先、取引先責任者、商談、活動の入力作業を、AIに任せるとどれくらい時間を減らせるかを無料診断でお伝えします。

▶ 無料診断のお申し込み:noboru-consulting.com

← ブログ一覧へ戻る