2026年10月20日
この記事の要点
- 問題点:やりたいことが、機能名で口頭で伝えられると、契約の範囲ではできないと分かったときに、「言った」「聞いていない」になる
- 解決策:機能ではなく、業務要求(誰が、どの業務で、何のためか)を伝える。要求と回答は、メールや箇条書きの書面に残し、双方の認識を合わせる
- 効果:本番リリース前の見直しや、行き違いが減るはずです。AIで書面づくりや調査は楽になるが、業務要求を正しく伝えることは残る
導入の設定を始めたところで、「その機能は、契約している範囲では使えません」と分かった。
お客様は、契約の前に伝えたと言う。提供する側は、聞いていないと言う。
こうした「言った、聞いていない」は、私の経験では、最も多い行き違いです。
文書づくりや調べものは、AIでずいぶん簡単になりました。ただし、何を、どう伝えるかは、別の話です。
以前の記事では、訪問すべき顧客を、どう見るかを書きました。今回は、導入の前に、やりたいことをどう伝えるかの話です。
事例と問題点:「カレンダーの拡張機能を使いたい」は、伝わっていたのか
士業の事務所の場合
予定は、使い慣れたグループウェアのカレンダーで見ていました。二つを併用するのは避けたい、という希望でした。事務員の方が、全員の予定を確認しています。
そのため、Salesforceのカレンダーを拡張する機能(有料の追加サービス)を使いたい、という希望がありました。
ところが、本番リリースの前に、契約していた当時のProfessional Editionでは、その拡張が使えないと分かりました。
お客様は、契約の前に伝えたという認識でした。提供する側は、聞いていないという認識でした。最終的に、標準のカレンダーで運用することになりました。
(Professional Editionは当時の名称です。現在のエディション一覧には、この名前では載っていません。)
問題点:やりたいことが、機能名で、口頭で伝えられている
「カレンダーの拡張機能を使いたい」。この伝え方は、機能の名前です。
その機能が、誰の、どの業務のために必要なのか。そこが伝わっていないと、できない、と分かったときに、話が噛み合いません。
そして、口頭だけで伝えていると、後から確かめる方法がありません。お客様も、提供する側も、自分は正しく伝えた、あるいは聞いていない、と思っています。
原因は、どちらかの落ち度ではありません。伝えているのが「機能」で、「業務要求」ではないこと。そして、それが書面に残っていないことです。
解決策:見直す2つのこと
1. 機能ではなく、業務要求を伝える
業務要求とは、誰が、どの業務で、何のために、それを必要としているか、という具体的な要求です。
この事例なら、「カレンダーの拡張機能を使いたい」ではなく、「事務員が、全員の予定を一覧で確認できるようにしたい」です。
機能の名前は、手段です。業務要求を伝えていれば、その手段が契約の範囲でできるかどうかも、一緒に検討できます。
何が業務要求なのかを決めるのは、お客様です。私たちは、それを引き出し、Salesforceの標準の使い方に合わせる方法を提案します。
2. 要求と回答を、書面に残す
書面といっても、大げさなものは要りません。メールや箇条書きで十分です。
やりたいことを、業務要求の形で、メールに書いて送る。それに対する「できる・できない」と、契約の範囲の回答も、メールで受け取る。
こうして、お互いの認識を、後から確かめられる形にしておきます。
できないことが分かったときは、標準の使い方に合わせるか、上位のエディションや追加の契約にするかを、費用とあわせて決めます。この事例では、標準のカレンダーに合わせて運用しました。
新しく独自の仕組みを作ってまで、複雑にすることは、おすすめしません。
AIに任せるとできること
業務要求を整理して、書面にまとめる作業は、手間がかかります。そのため、つい後回しになり、口頭で済ませてしまいがちでした。
AI時代には、ここが楽になります。
打ち合わせの議事録やメールから、Claudeが、やりたいことを業務要求の形に整理して、書面にまとめます。議事録を読み取って内容を整理する体験は、以前の記事に書きました。
「探す・まとめる・入力する」がゼロに。ClaudeとSaaS接続だけで会議準備が3分で終了 https://note.com/nueshima/n/n7b2f704be574
契約予定のエディションでできるかどうかを、公式の資料から調べさせることも、プロンプトで可能だと思います。
ただし、AIが業務要求を決めるわけではありません。何が自社の業務に必要なのかは、お客様が決めることです。
また、AIの調べた結果は、公式の最新の情報で確かめる必要があります。製品の仕様や名称は、変わるからです。
まとめ:書面づくりや調査は楽になるが、業務要求を正しく伝えることは残る
契約の前に見直す2つのこと
●機能ではなく、業務要求(誰が、どの業務で、何のためか)を伝える
●要求と回答を、メールや箇条書きの書面に残し、認識を合わせる
見直したあと、お客様にとって、次のような変化が期待できます。
- 本番リリースの前に、使い方の見直しに追われることが減るはずです
- 「言った、聞いていない」による行き違いが、減るはずです
- できないことと、追加の費用が、前もって見えます
私たちにとっても、認識のずれによる手戻りが減ります。そのぶん、稼働後の運用支援や、AI活用の提案に、時間を使えます。
AIで、書面づくりや調査は楽になります。でも、業務要求を正しく伝えることは、残ります。
まずは、今いちばん頼みたい機能を1つ選んでみてください。そして、「誰が、どの業務で、何のために必要か」を、メール1通にまとめてみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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