Dreamforce 2026まとめ|AIforceとSalesforce in Claudeで、中小企業が今からできる3つの準備

2026年10月3日

この記事の要点

  • 問題点:AIの入口が増えても、AIはユーザーの権限と入力されたデータのまま動くため、権限や項目が整理されていないと、その雑さがそのままAIに引き継がれる
  • 解決策:権限セット、項目名と説明、Agentforce(Einstein)の設定の3つを、Salesforceの標準の使い方に沿って見直す
  • 効果:Claude、Slack、Salesforceの画面のどこから使っても、安全に、現場で使える答えが返ってくる状態に近づく。AIで入力の手間は減るが、誰に何を見せるか、項目が何を意味するかを決めることは残る

「Salesforceを開かずにSalesforceを使う」。Dreamforce 2026でいちばん象徴的だったのは、新しい機能そのものよりも、この“入口”の変化でした。

こんにちは。京都でSalesforceの導入・活用支援をしている上嶌昇です。2010年からSalesforceの導入に携わり、現在は個人事業主として、Salesforceを導入済みの中小企業のお客様と一緒に、SalesforceとClaude(MCP連携)を組み合わせた業務の仕組みづくりをしています。

今年のDreamforceでは、Salesforce公式ブログだけでも21本の発表がまとめられました。正直、全部を追いかける必要はありません。この記事では、Salesforceを導入済みの中小企業にとって本当に関係がある話だけを選び、「今から何をすればいいか」まで落とし込みます。

Dreamforce 2026の21の発表は「3つの変化」にまとまる

Salesforce公式ブログ「21 Things We Announced at Dreamforce 2026」(2026年9月28日)の発表を、私なりに3つに分けると次のようになります。

変化主な発表中小企業への関係
① 入口が増えるAIforce、Agentforce Coworker、Headless Experience Layer、社員向け音声操作大きい。日々の使い方が変わる
② エージェントが賢く、長く働くJob-Ready Agents、Long-Horizon Agents、マルチエージェント連携、AI Skills、CRM推論モデル「Koa」中くらい。まずは既製エージェントから
③ 運用・評価の道具が揃うAgent Optimizer、カスタムスコア、A/Bテスト、Agent Health Monitoring、Einstein Botからの自動移行導入後に効いてくる

大企業向けの発表は②と③に集中しています。一方、人数の少ない会社ほど効くのは①です。「入力が面倒でSalesforceが使われない」という、中小企業でいちばん多い悩みに直接効くからです。以下、①を中心に見ていきます。

AIforceとは:入口は3つ、権限はひとつ

AIforceは、AIエージェントがどこからでもSalesforceの機能にアクセスできるようにする「リアルタイムのインターフェース層」です。2026年9月17日に発表されました。入口は次の3つです。

  • Claudeforce:Claudeの中からSalesforceのデータを使う
  • Slackforce:Slackの中から使う
  • Agentforce Coworker:Salesforceの画面(Lightning)の中で働くAIの同僚

私がいちばん大事だと思うのは、どの入口から入っても「そのユーザーの権限のまま」動くという設計です。Claudeに頼んだからといって、その人が見られない商談や顧客情報が見えるわけではありません。あわせて、データを保持しないZero Data Retentionの方針も示されています。

裏を返せば、権限設計が雑なままだと、その雑さがそのままAIにも引き継がれます。「とりあえず全員システム管理者」になっている中小企業の組織は、実は珍しくありません。AIの入口が増える今こそ、ここを見直すタイミングです。

なお、プレスリリースに価格の記載はなく、提供状況は「地域によって異なる」とされています。

Salesforce in Claude(ベータ)の始め方:始めるのは「管理者」

ClaudeからSalesforceを使う機能は、2026年9月15日からClaudeの有料プランでベータ提供されています(Coursivの解説)。始め方は次の流れです。

  1. Salesforceの管理者がAgentExchangeから利用を申請する
  2. 自社のSalesforce組織(org)を1回だけ接続する
  3. 使うユーザーグループにプラグインを割り当てる
  4. 必要に応じてSlackも連携する

ポイントは、営業担当者が自分だけでは設定できないことです。管理者が有効にしたあと、各自がいつものSalesforceのログイン情報で認証します。「現場が勝手につなぐ」ことがないのは、経営者から見れば安心材料です。その代わり、社内に管理者がいない会社は、ここで止まります。

まだベータなので、正式提供の日程、対象エディション、日本での提供状況は公式には示されていません。サービス・マーケティング・コマース向けのスキルパックやSlackforceもこれからです。本番の商談データにいきなりつなぐのではなく、まずSandboxや少人数で試すのが安全です。

日本語対応とCRM推論モデル「Koa」:中小企業にとっての意味

地味ですが、日本の中小企業に効くのが対応言語の追加です。今回の発表では、日本語を含む6言語(スペイン語、イタリア語、ドイツ語、ポルトガル語、日本語、カナダフランス語)が追加されました。「英語だと現場が使わない」という壁が低くなります。

もうひとつは、Salesforce初のCRM向け推論モデル「Koa」です。NVIDIA Nemotronを基盤にしたモデルで、商談や顧客といったCRMの文脈で考えることに特化しています。

ただ、中小企業が「どのモデルを使うか」を考える必要は、今はほとんどありません。どのモデルも、答えの質は「何がどこに入力されているか」で決まります。項目名が「備考2」で中身もバラバラなら、どんな推論モデルでも現場が使える答えは返ってきません。モデルの進化はSalesforceに任せて、自社はデータの整理に集中するのが現実的です。

Salesforce導入済みの中小企業が今からできる3つの準備

AIforceもSalesforce in Claudeも、本格的に使えるのはこれからです。ただ、準備は今日から始められます。どれも追加費用はかかりません。

見直し1:権限セットを見直す

「誰が、どのオブジェクトを、どこまで見られるか」を棚卸しします。AIはその人の権限のまま動くので、ここがそのままAIの安全設計になります。

  • 「設定」の「ユーザー」で、プロファイルが「システム管理者」になっている人数を確認する
  • 管理者が必要な人を絞り、それ以外の人は標準のプロファイルと権限セットで必要な権限だけを付ける
  • 「この人はこの商談を見られるべきか」を、AIに聞かせる前提で確かめる

見直し2:項目名と説明を整える

「備考2」「フラグA」のような項目に、人が読んで分かる名前と説明を付けます。AIにとっても、それが項目の意味を知る唯一の手がかりになります。

  • オブジェクトマネージャーで、取引先・商談などの項目一覧を開き、名前だけでは意味が分からない項目を洗い出す
  • 項目の「説明」に、何を、いつ、誰が入力する項目かを書く
  • 標準項目で足りる情報は、独自の項目ではなく標準項目に入れる。使っていない独自項目は増やさない

見直し3:Agentforce(Einstein)の設定と権限を確認する

Winter ’27から、対象エディションの組織ではAgentforceが順次自動で有効化されています(Techforceの解説)。自動有効化そのものに追加費用はかかりません。

  • 自社の組織でAgentforceが有効になっているかを、設定画面で確認する
  • 「Manage AI Agents」権限を誰が持っているかを確認し、管理者以外に付いていないか確かめる

この3つは、AIを使うかどうかに関係なく、Salesforceを健全に運用するための基本でもあります。「AIの準備」をきっかけに、後回しになっていた整理を片付けるのが、いちばん費用対効果の高い進め方だと思います。

まとめ:入口が増えても、土台はひとつ

  • 権限セットを見直す
  • 項目名と説明を整える
  • Agentforce(Einstein)の設定と権限を確認する

Claudeからでも、Slackからでも、Salesforceの画面からでも、最後に参照されるのは同じSalesforceのデータと権限です。入口が増えるほど、その土台を整えている会社とそうでない会社の差は大きくなります。

AIで入力の手間は減ります。でも、誰に何を見せるか、項目が何を意味するかを決めることは残ります。

社員が少ない会社ほど、入力の手間が減る効果は大きくなるはずです。まずは、システム管理者のプロファイルを持っている人が何人いるか、確かめるところから始めてみてください。京都からも、この変化を実際に試しながら、また現場の結果を共有していきます。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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