Salesforceの取引先と基幹システムの得意先は、単位が違う。連携の前に、提案の段階で決める3つのこと

2026年10月1日

この記事の要点

  • 問題点:基幹システムの得意先には受注先・納品先・請求先が含まれており、そのまま取引先にすると、営業が商談を管理する単位とずれて使えない一覧になる。これがプロジェクト開始後に分かると、オブジェクトの追加などで工数と期間が増え、お客様の不満につながる
  • 解決策:提案の時点で取引先の管理単位を確かめ、基幹のデータを名寄せして「商談先として管理する1社=1取引先」にし、基幹の得意先と実績はカスタムオブジェクトで受け止める
  • 効果:プロジェクトが計画どおりに進み、お客様の不満を生まない。AIで名寄せの作業は減るが、取引先1社の定義を決めることは残る

問題点:基幹システムの「1社」と、Salesforceの「1社」は違う

基幹システムの得意先マスタは、受注、納品、請求という「お金と物の流れ」の単位で作られています。そのため、同じ会社でも、受注先、納品先、請求先とレコードが分かれていることがよくあります。

一方、Salesforceの取引先は、商談を管理するための単位です。得意先マスタをそのまま取引先に移すと、同じ会社が何件も並び、営業は「どれに商談を登録すればいいのか」と迷います。使われない一覧になってしまいます。

さらに困るのは、このずれがプロジェクトの開始後に分かることです。提案の段階のヒアリングは営業の業務が中心で、基幹システムのマスタの中身まで確かめないことが多いからです。

開始後に分かると、データを受け止めるオブジェクトの追加、データ連携の追加、移行のやり直しが発生します。工数が増え、期間が延び、お客様の不満につながります。

これは、お客様の側の問題ではありません。提案の段階でマスタの中身を確かめる手順がなかった、進め方の問題です。

解決策1:取引先の管理単位を、提案の時点で確かめる

基幹システムの得意先マスタに、どの区分が含まれているかを、提案の時点で確かめます。分かれていれば、名寄せとデータの受け止め先を、最初から見積と計画に入れます。

確かめるときは、得意先マスタの見本を見ながら、区分ごとに「Salesforceでどう扱うか」を一覧にすると整理しやすくなります。

基幹システムの区分営業が商談を管理する相手かSalesforceでの扱い
受注先商談先と同じ場合が多い商談先の単位に名寄せして取引先にする
納品先多くは違う基幹システム用のオブジェクトに入れる
請求先多くは違う基幹システム用のオブジェクトに入れる
代理店経由の販売先業態による営業が商談を持つ相手を取引先にする

※書き方の例です。どの区分を取引先にするかは、お客様の商談の持ち方で決まります。

事例:ヘアケア製品のメーカー

代理店を通してサロン(美容室)に販売していました。基幹システムの得意先は代理店ですが、営業が商談を管理するのはサロンです。売上実績にサロンのコードが一部しかないことが開始後に分かり、基幹システム側で採番していただきました。そのために、オブジェクトの設計と開発、データ連携のバッチ1本の追加が必要になりました。提案の時点で分かっていれば、最初から計画と見積に入れられた作業です。

解決策2:名寄せして、商談先として管理する1社=1取引先にする

Salesforceの取引先は、商談先として管理する1社を1件にします。たとえば、ABC社の東京本社と大阪支社からそれぞれ商談があるなら、取引先は2社です。基幹システムの区分には合わせません。

基幹のデータは、この単位に名寄せしてから取り込みます。重複は、社名の見た目ではなく、標準の重複ルールや基幹のコードなど、客観的なキーで見分けます。新しく独自の突き合わせルールを作り込むことは、おすすめしません。

事例:ある製造業の会社

基幹システム(SAP)の得意先マスタに、受注先、納品先、請求先などの区分が含まれていることが、開始後に分かりました。重複した取引先の整理はお客様にお願いし、取引先の階層をどう持つかは次のフェーズに先送りしました。予定していた範囲が、途中で動いた形です。

解決策3:基幹の得意先は、カスタムオブジェクトで受け止める

納品先や請求先を取引先にそのまま移すと、営業が使わないレコードが一覧に大量に並びます。そのほうが、標準の取引先の使い方から外れてしまいます。

Salesforceの取引先には商談先だけを置き、基幹システムの得意先は、基幹システム用のカスタムオブジェクトに入れます。このオブジェクトを取引先と参照関係(リレーション)でつなぎ、売上実績はこのオブジェクトにひもづけて取り込みます。基幹の実績も、取引先の単位で確かめられるようになります。

基幹システムとの連携が開発範囲に含まれる場合、このオブジェクトの追加は作業として発生します。だからこそ、解決策1の「提案の時点で確かめる」が大切になります。

AIに任せるとできること

以前は、得意先マスタ、名刺、企業データベースなど複数のリストをExcelで突き合わせ、1件ずつ仕分けていました。商業の会社では、名刺約3万件を含む3つのリストを、拠点ごとの重複を整理しながらまとめたこともあります。

今は、AIに基幹システムの得意先マスタとSalesforceの取引先を読ませれば、同じ会社と思われる組み合わせの候補を短時間で出せます。名寄せの作業時間は、大きく減らせるはずです。

ただし、AIは決めた基準にしか従えません。「商談先として管理する1社を1取引先とする」という基準が決まっていれば、AIは名寄せだけでなく、新しく登録された取引先が基準に合っているかのチェック役にもなれます。

効果:取引先の単位が先に決まると、何が変わるか

提案の段階で取引先の単位が決まっていれば、お客様にとっては、次のような変化が期待できます。

  • 開始後のオブジェクトやデータ連携の追加が減り、プロジェクトを計画どおりに進めやすくなる
  • 取引先ごとに商談と活動がまとまって見え、営業が登録先で迷わなくなる
  • 基幹システムの実績も、取引先の単位で確かめられる

私たちにとっても、開始後の追加開発や移行のやり直しが減り、見積の精度が上がるはずです。その分の時間を、標準の使い方の提案や、稼働後のAI活用の支援に使えます。

まとめ

提案の段階で決める3つのこと
●取引先の管理単位を、提案の時点で確かめる
●名寄せして、商談先として管理する1社=1取引先にする
●基幹の得意先は、カスタムオブジェクトで受け止める

AIで名寄せの作業は減らせます。でも、取引先1社の定義を決めることは残ります。まずは、得意先マスタからよく取引のある1社を選び、受注先・納品先・請求先で何件に分かれているか数えてみてください。


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