取引先データに「年賀状リスト」の名残はありませんか。AIに名寄せを任せる前に決めておく3つのこと

2026年9月27日

そろそろ年賀状の準備を始める時期ですね。

年賀状のリストというと、宛名印刷のためのファイルと思われるかもしれません。ところが、Salesforceの導入をお手伝いしていると、この年賀状リストが「会社でいちばん充実した顧客リスト」になっている場面に何度も出会いました。

今回は、年賀状リストをSalesforceに移したときの経験から、今お使いのSalesforceの取引先データにも残っているかもしれない「重複と揺れ」の話をします。

AIに名寄せやデータ整理を任せられるようになった今だからこそ、その前に決めておいてほしいことがあります。

年賀状リストの中身

あるメディア企業で、Salesforceの導入をお手伝いしたときのことです。

営業部門の顧客情報を集めようとしたところ、いちばん情報がそろっていたのが年賀状リストでした。担当者ごとにExcelファイルがあり、取引先の担当者の名前、会社名、部署、役職、住所が入っています。

ところが、このリストを移すための確認事項は22件になりました。

同じ内容のファイルが、古い形式と新しい形式で2つある。1つのファイルに「旧」と「新」のシートが並んでいる。宛名ラベルに合わせて、住所を長めに書いたシートと短めに書いたシートがある。今年の分と去年の分のどちらが最新なのか分からない。

中身を見ると、郵便番号の欄に役職が入っていたり、住所の全角と半角、スペースの有無が違うために、同じ会社が別の会社に見えたりしていました。欄外には「削除」「担当ではない」といったメモも書かれていました。

いちばん大きかったのは、同じ人が何度も出てくることです。担当者のリストにも、部長のリストにも、役員のリストにも同じ方が載っている。年賀状を出す立場ごとにリストが分かれていたためです。

お客様からは「整理してから渡すのは難しいので、入力のときに社名・氏名・役職が同じなら自動で1件にしてほしい」というご要望をいただきました。

当時は、これを自動でまとめる仕組みを作ることはできませんでした。表記の揺れが多すぎて、マクロで一括して直せる状態でもなかったためです。

結局、人の手で対応しました。弊社の新入社員をプロジェクトに加え、1件ずつ確認しながら修正していきました。スポンサーか代理店か分からない会社や、住所が違う同じ名前の会社など、弊社で判断できないものは一覧にまとめて、お客様に確認をお願いしました。

この作業だけで、2週間以上かかったと記憶しています。

これは特別な会社の話ではない

年賀状リストは極端な例に見えるかもしれません。でも、移行するデータの状態は、どの会社でもよく似ていました。

別の会社では、名刺3万件と販売管理システムの得意先、企業データベースの3つを1つにまとめました。名刺から取引先を作ったため、最初に取り込んだ地方の事業所の住所が取引先の住所になり、後から本社の名刺を取り込んでも更新されない、ということが起きていました。

また別の会社では、「お客様名」の欄に会社名、個人名、ふりがなが混ざって入っていました。Excelの進捗表では、取り消し線や色分けで「状態」を表していて、そのままではSalesforceに移せませんでした。

こうした問題は、導入のときにすべて解決できるわけではありません。期限までに決めきれなかったものは、そのままSalesforceに入り、その後も名刺や問い合わせから新しいデータが加わっていきます。

導入から時間がたった組織を見せていただくと、同じ会社が「株式会社ABC」「ABC株式会社」「(株)ABC」「(株)エービーシー」のように、何件も登録されていることがよくあります。

人が見れば同じ会社だと分かります。でも、Salesforceの重複チェックでは別の会社として扱われ、商談や活動も別々の取引先にぶら下がっていきます。

AIに任せると、何が変わるか

以前の記事で、Salesforce、freee、Gmail、名刺アプリの顧客情報をClaudeに比べさせ、差分を確認してから更新する検証をしました。表記の揺れや、項目がばらばらなデータの整形も、Claudeはかなりの部分をこなしてくれます。

年賀状リストを移したときは、新入社員が2週間以上かけて手で直しました。今なら、Claudeに重複の候補と理由を出させ、人は判断が必要なものだけを確認する、という進め方ができます。

ただ、Claudeに名寄せを頼むと、必ず聞き返されることがあります。「どちらの情報を正としますか」です。

AIは候補を出してくれますが、どれを残すかは会社が決めることです。ここを決めずに任せると、AIの判断にばらつきが出て、結局人が見直すことになります。

なお、件数が多い場合は、APIの制限もあるため一度にすべてを処理するのは難しく、別の仕組みと組み合わせる必要があります。

決めておく3つのこと

1. どの情報を「正」とするか

住所は本社か、名刺を交換した事業所か。電話番号は代表か、直通か。複数の情報源がある場合、どれを優先するかを決めておきます。

名刺の住所が取引先の住所になってしまった例は、このルールがなかったために起きました。

2. 重複を1件にするとき、何を残すか

年賀状リストで同じ人が何度も出てきたのは、担当者、部長、役員のそれぞれがその方とつながっていたからです。

単純に1件にまとめると、「誰がこの方と関係を持っているか」という情報が消えてしまいます。重複は、見方を変えれば社内の人脈の記録でもあります。

当時は、取引先責任者に「担当者履歴」の項目を作り、どの担当者や役職者がその方とつながっていたかをテキストで残しました。1件にまとめても、関係の記録は消さないようにしたわけです。

AIに名寄せを任せる場合も、「まとめるときは、関係していた担当者を履歴欄に残して」と指示に含めておけば、同じ考え方で整理できます。

3. メモや書式に込められた意味をどう扱うか

「削除」「担当ではない」という欄外のメモや、取り消し線、色分けには、書いた人にしか分からない意味があります。

AIは書かれている文字を読むことはできても、その背景までは分かりません。どのメモが「もう付き合いがない」を意味するのかは、社内で確認して決める必要があります。

まとめ

AIに名寄せを任せる前に決めておくこと
●複数の情報源があるとき、どれを「正」とするか
●重複を1件にするとき、誰との関係を残すか
●メモや書式に込められた意味をどう扱うか

AIのおかげで、データを整える作業そのものは大きく減りました。

でも、どのデータを信じて、何を残すかを決める作業は残ります。むしろAIに任せるからこそ、ここをはっきりさせておくことが大切です。

年末に年賀状のリストを開く機会があれば、Salesforceの取引先と見比べてみてください。同じ会社が何件あるか、住所はどれが正しいか。それが、AIに任せる前の最初の一歩になると思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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